高齢化で迫る事業承継

皆様もご存知の通り、日本では高齢化が社会問題となっており、事業承継を取り巻く環境は非常に過酷です。
2023年時点では日本人全体の平均年齢は48.4歳(高齢者割合は29.1%、)となっており、若く優秀な被雇用者を探すだけでも困難です。
後継者に相応しい人材となると更に限られていくでしょう。今回は日本企業が喫緊の対応を求められている事業承継についてお話いたします。

背景

経営者の年齢構成比と平均年齢の推移

経営者の年齢構成の推移を確認してみると、5年間で最も多く増加しているのは70歳代以上となっています。
平均年齢も少しずつ上がっており、2023年(上図範囲外)時点では63.8歳を記録するなど、経営者の高齢化が進んでいることが伺えます。

事業承継に適した年齢

健康寿命の平均は72.7歳(男性:2019年時点)となっています。
実際の健康寿命は個人差が大きい為、65歳には引退できる状態を整えていることが望ましいです。
また、企業によって異なるものの、一般的に選定開始から本人了承までに1~3年、教育に5~10年、引き継ぎに3年以上かかります。
仮に本人了承に1年、教育に5年、引き継ぎに3年かけた場合でも計9年かかるため
65歳で引退する場合、56歳時点では既に候補者の選定を開始している必要があります。

加えて、経営者の年齢だけでなく、後継者の年齢も考える必要があります。
上記を前提とした場合、後継者の承継時の年齢は56歳以下であることが望ましく
現経営者が選定を開始する56歳の時点で、47歳以下の社員から選択することになります。

事業承継を取り巻く環境

事業承継に関する類型分布

上記の通り、後継者の選定は比較的スムーズに行えたとしても9年かかるため、56歳時点では後継者の選定を開始し
57歳時点では後継者本人の了承も得て、正式に決定していることが望ましいです。
しかし現状は50歳代の21.7%が時期尚早と考え、後継者未定は20.9%となっています。

決定率を確認しますと、後継者がいる企業のうち過半数は40歳未満の時点で決定していることが伺えます。
40歳未満は実子や共同設立者など、候補が多いことが理由だと推測できます。
40歳代となると、70歳以上との差が7.3%であることからも、未定及び時期尚早企業の殆どは
廃業か未定のままとなることが考えられ、現時点で既に事業承継が困難であることが伺えます。

日本労働者人口の年齢別推移(2013年を基準に2023年まで)

各年齢別の労働者人口の推移を確認すると、25歳以上45歳未満の労働者は減少していることが分かります。
一方で、45歳以上の労働者人口は上昇しており、労働人口そのものの高齢化が進んでいます。
※ 25歳未満の労働者数も増えてはいるものの、2023年時点で全体の8.5%程度にしか該当しておらず、大きな影響はないと考えられます。

後継者の殆どは労働者から選出されるため、労働人口の高齢化は後継者全体の高齢化に繋がります。
後継者として適切な人材が47歳以下であることを考えると、今後はさらに人材確保の難化が見込まれます。

増加する倒産

後継者不在で倒産した企業の経営者離脱理由

実際の問題として、人材確保は時間経過とともに難化しており、
後継者不在のまま経営者が離脱して倒産となった企業は年々増加しています。
2023年時点では456件が後継者難で倒産しており、そのうちの約83%が経営者の体調不良や死亡など
本人の意思に無関係な事象で引退を余儀なくされています。
後継者育成が不十分な企業では、経営者引退に対応できないため倒産となるケースが多くみられます。
別資料でも、2022年時点での後継者不在率は61.1%を記録しており、後継者の不在は既に社会問題となっています。

対応策

予期せぬ経営者の離脱や、後継者確保の激化は、早期の承継準備である程度防止できます。
親戚や社員に適切な人材がいれば、候補者に早めの打診を行い、引き継ぎに備えるのが良いでしょう。
現時点で候補者がいない場合は外部招聘、事業承継マッチングサイトの活用や、信用できる取引先に売却を
持ち掛けるなどの方法もございます。
また、最近ではM&Aをサポートするコンサルティング会社に事業承継の相談をしたり、
ファイナンシャルアドバイザーに株の管理を委ねることも増えており、承継方法は多様化しております。

最後に

経営者にとって次世代のお話となる事業承継というのは、後回しにされる傾向があるだけでなく
適切な人選を行いたい気持ちから、候補選定が長期化する傾向もございます。
しかしながら、上述したように時間経過自体が大きなリスクとなることを考慮する必要があり、早期の事業承継が求められます。
早期の事業承継は、今後悪化が見込まれる後継者確保への対策だけでなく、後継者が失敗した際に自身が経営者として戻り
立ち直しを行える機会・期間を増やすことにも繋がるなど、様々なメリットがございます。

弊社は1982年に設立した「公認会計村上健夫事務所」が母体のコンサルティング会社となっております。
長年積み上げてきた歴史の中で、事業承継を含め様々な課題解決に取り組んで参りました。
弊社であれば経営上の課題や、それに伴う経営者様個人のお悩み等を一貫してご相談いただけます。
お悩みのことがあれば何なりとお申し付けください。